豆腐根性

はたらくくるま @tfkjay

香水

    生まれて初めて香水を買った。正確にはプレゼントしてもらった。

    今までも香水に興味を持つ機会は何度かあったが、いくつかの理由で避けていた。まず、アレは「イイ女」が使うモノで、わたしはその「イイ女」ではないと思っていること。「イイ女」は泉里香さんのイメージ。泉里香さんは残業帰宅即飯即寝の限界OLとは程遠い。あと、ちゃんとした香水って値段が高いこと。飽きた時の心理的ダメージはモノの値段に比例する。そして、そのちゃんとした香水というものは、容器が瓶や陶器だったりするので処分が面倒くさそうということ。

    欲しいものがあっても、処分する時のことを考えて断念してきた経験がたくさんある。最近だと、NHKの「駅ピアノ」という番組を見てピアノに挑戦したくなったが、電子ピアノの処分が面倒くさそうだなと思い購入にはいたらず。おそらく粗大ゴミで捨てることになるだろう。手間がどれだけかかるか具体的に調べたわけでもない。面倒くさいかはやってみないと分からないのに、いつも想像上の面倒くさそうに負ける。

    プレゼントしてもらった日の夜、さっそく寝る前に香水をつけた。翌朝目覚めると、いつもと違って匂いがする。たのしい。しかし、お店で感じた匂いと違う気がする。よく知った、生活感のある匂いのような。なんだコレは…ラストノートってやつか…?と考えて気づいた。昨晩お風呂に入れたバスクリンの薬っぽさと柑橘が混じったような匂いが、顔にかかった寝起きボサボサ髪から漂ってる。よかった。安心した。バスクリンだっていい匂いだけど。

    内腿に1プッシュして家を出る。香水をつけると気分がアガる。すばらしい。職場で小さなイライラを覚えても、「でもわたしイイ女の匂いするからなぁ」と心に余裕を持てる。イイ女だから香水をつけているのではなく、香水をつけるとイイ女になれるのね。トイレでズボンを下ろすと、いい匂いがフワッと鼻腔に入る。その度に、お店で香水を選んでいる時のワクワクとドキドキを思い出す。新しい習慣が増えた。