豆腐根性

はたらくくるま @tfkjay

ふるさとって何?

 数日前、仕事中に、同居する母親からLINEが来た。散歩をしていると、わたしの小学校からの友人に声を掛けられたらしい。彼女とは、大学進学を機にお互い地元を離れたこともあり、長らく疎遠になっていた。LINEのトーク画面を開くと、最後のメッセージは6年前の日付。久々に連絡をとった。彼女は実家に帰省中で、普段は中部地方で働いているそうだ。緊急事態宣言エリアなので、次回帰省のタイミングで食事に行こうと約束した。彼女が母親に声を掛けたことが、連絡をとるきっかけになり感謝している。地元ならではのハートフルエピソードである。

 

 辞書を引くと、「地元」はその人が居住している土地を、「ふるさと」は生まれ育った土地をさすそうだ。わたしがいま暮らす土地は、双方に当てはまる。わたしは「ふるさと」で暮らしている。こう書くと、文章に間違いはないが、なんだか違和感がある。この場合、「地元」を当てはめる方がしっくりくる。

 物心ついた時から、ここで暮らしている。大学時代の4年間だけは実家を出て、京都で一人暮らしをしていた。その間も、この土地をさす言葉として、「地元」は使っても「ふるさと」を使ったことは一度もない。後者は、その外側に立って使うイメージがある。片道2時間の隣県では、まだ内側から出ていなかったのか。とはいえ、たとえ北海道にいたとしても、「ふるさと」という言葉が自然に出てくるとは思えない。実感をもってこの言葉を使うには、若すぎるのか。少なくとも、「ふるさと」と「地元」を分離しないことには、実感は得られない。そんな気がする。

 

 少し前、岸政彦さんと柴崎友香さんの「大阪」を読んだ。その土地を自分の「地元」にするには、家族をつくって、子どもを通してPTAや自治体の活動に参加すること。うろ覚えだが、そんな風に書いてあったことを思い出した。今のところ、子どもが欲しいと思えない。このまま「地元」ができなきゃ、「ふるさと」も分からないままか。